高齢者の転倒 予防して安心できる生活をおくるために

高齢者の転倒は大きなけがや病気、さらには寝たきりにつながる可能性があります。

安心して自立した生活をおくるためにも、本人や周りが予防に向けてできることはあるのでしょうか。

ここでは、生活で意識すべきポイントや予防の方法をお伝えします。

高齢者が転倒するとどうなる?

高齢者が転倒すると、生活に介護を必要とする可能性が高くなります。転倒は内閣府による「令和3年版高齢社会白書」において、介護が必要となった主な原因の4番目となっています。高齢者は若年者よりけがをしやすい身体となっており、転倒によって骨折や頭部外傷などが生じることも少なくありません。骨折などの大けがを負ってしまうと、歩くために杖や手助けが必要となったり、寝たきりでの生活になってしまいます。そのため転倒を予防し、安心して自立した生活をおくることが大切であるといえるでしょう。

参考:令和3年版高齢社会白書(全体版)

高齢者の転倒はなぜ起きる?

高齢者は、加齢や持病、内服によって若者より転びやすい身体となっています(内的要因)。加えて周りの転びやすい環境(外的要因)が合わさることによって転倒が生じやすくなります。東京消防局の報告(令和元年)では、高齢者の転ぶ場所は住宅内が5割以上をしめることがわかっています。いつも慣れている生活スペースでも、脚が上がりにくくなることで転ぶことも少なくありません。そのため、高齢者の転倒を防ぐためには、身体へのアプローチや普段の生活している環境をととのえることが必要となります。

参考:東京消防庁 緊急搬送データからみる高齢者の事故〜日常生活での高齢者の事故を防ぐために〜

高齢者の転倒を予防するためには?

内的要因の対策について

トレーニングをして脚の筋肉を維持しましょう

脚の筋肉のトレーニングは転倒の予防につながります。簡単にできる方法は以下の通りです。

椅子からの立ち座り

椅子に座った状態から立ち座りをくり返し、太ももの筋肉をきたえましょう。

1セット10〜15回 1日2セット行いましょう

片脚立ち

片脚立ちを行ってバランス能力をきたえましょう。転びそうな時は手すりなどを持ちます。

片足ずつ10秒 1日10〜15回行いましょう

ウォーキング

脚の筋肉を維持するためには、外を歩くことも効果的です。転ぶ心配がある時は家族に付きそってもらいながら無理のない程度に行いましょう。

食事を見直しましょう

トレーニングの効果を高めるためにタンパク質の摂取を意識しましょう。

緑黄色野菜やイモ類など様々な食材をバランス良くとることも大切です。

※心臓病や腎臓病などの基礎疾患がある人は医師の相談が必要です。

内服の副作用を理解しましょう

普段飲んでいる薬の副作用を確認し、ふらつきや脚の脱力感に注意しましょう。

例えば抗精神病薬や睡眠薬を内服している場合は日中ふらついてしまう可能性があります。

転倒につながりそうな副作用があれば事前に医師に相談したり心構えておくことが大切です。

外的要因の対策について

段差や階段に気をつけましょう

毎日の生活で利用している段差や階段も、転倒の原因になりやすいです。

あわてて移動したときにつまづいてしまうケースや、降りるときに踏みはずした結果、転倒することもあります。

階段はできるだけ手すりを利用する段差には目印や滑りどめをつけるなど、慣れている場所の転倒を防ぎましょう。

夜の移動は電気をつけましょう

夜間、トイレなどで起きたときは判断力がにぶく、ふらついて転んでしまうこともあります。

動線に障害物をなくすことや夜でも明かりをつけることを心がけましょう。

できれば、トイレの近くに寝室を移すことも大切です。

履きものにも注意しましょう

室内でも、履きものが合わず転倒することがあります。

特にスリッパの利用は、足に合っていないまま移動すると、つまづきや段差の踏みはずしの原因につながるため避けましょう。

足元が寒ければ滑りどめの靴下をはくなど、滑って転倒することを防ぎましょう。

身体の状況に合わせた自宅環境を整備しましょう

人にとって転倒しやすい状況はさまざまです。

持病によって視界が悪かったり、膝が痛い中歩いたりしていると、転倒する状況も変わってきます。

視界が悪い人は壁をさわって歩けるようにする、膝が痛む人はじゅうたんを敷かずつまづかないようにするなど、その人に合わせた環境を整えましょう。

再転倒の可能性を考えましょう

過去に転んだ人は再び同じ場所で転倒する可能性が高いといわれています。

そのため、対策を念入りに行うことが大切です。

一度転んだ場所は同じことが再び起きないよう、環境の整備に努めましょう。

まとめ

高齢者の転倒は、大けがによって介護が必要な状態になりやすいことがわかりました。

身体のトレーニングや生活環境の調整によって転倒の可能性をへらすことに努めましょう。

ABOUT US
ruumihouse
30代前半の医療ライター|大学院卒の元理学療法士(保健医療学博士)|二児の母として育児奮闘中